アナログレコードを聴くために必要なレコードプレーヤー。改めて考えると「どんな仕組みになっているのだろう」と疑問に持つ人もいるでしょう。
ここでは、レコードプレーヤーにおけるレコード針の役割、レコード針の種類などを詳しくご紹介します。
どんな仕組みになっているのかを知っていれば、レコード針を交換する際もスムーズにできるので、ぜひチェックしてください。
レコードの仕組み
レコードプレーヤーに針が付いており、その針で音が聴けるということを漠然と理解している人は多いと思います。
しかし、正しい構造は理解できているでしょうか?レコードプレーヤーに取り付けられる針は、レコードプレーヤーに直接取り付けられているわけではありません。
正しくは、レコード針はカートリッジの一部なのです。そのため、カートリッジ全体をレコード針とすることもあります。
レコード針を交換する際にレコードプレーヤーの仕組みを理解していると、より効率的に作業が進むので正しく交換するために知っていて損はありません。
この機会に、レコードプレーヤーとレコード針の仕組みや役割を正しく理解しましょう。
カートリッジ
レコード針から集められた音の情報をマグネットやコイルで電気信号に変換し、音を再生する役割を担うパーツです。
カートリッジはレコード針を囲うように固定するパーツなので、レコード針もカートリッジ内に含まれています。
針と同様に寿命があるため、時期が来たら交換する必要がありますが、正しく使うことで長く愛用できます。
先ほど説明したように、カートリッジの全体をレコード針とすることもあるので覚えておきましょう。
レコード針
カートリッジの先端に付いている針のことで、カートリッジも含めた部分をレコード針とするケースもあります。
レコード針だけがプレーヤーについているのではなく、厳密にはカートリッジの一部にレコード針が付いているのが正解です。
針を震えさせながらレコードに刻まれた細かな溝をピックアップする、とても大切なパーツと言えるでしょう。
レコード針には種類がある
レコード針は、どれも同じというわけではありません。カートリッジの種類とレコードに直接触れる針の種類は、いくつかあります。
それぞれの種類を知っていると扱いやすく、好みの音質でレコードを再生できて満足感も得られるでしょう。
カートリッジの種類や針の素材を理解して、交換の際の参考にしてください。
カートリッジの種類
レコードの情報を読み取る働きを持つカートリッジは、「VM型」「IM型」「MP型」「MF型」などさまざまな種類が販売されています。
種類豊富に販売されていますが、現在出回っているのは「MM型」と「MC型」が主流なので、選ぶ際も「MM型」「MC型」から選ぶのが一般的です。
以下に、それぞれ詳しく解説していきます。
MM型
「Moving Magnet」の略で、針と一体化されているカンチレバーにマグネットが取り付けられており、カンチレバーが動くことでマグネットも振動し、音が生まれる仕組みです。
現在流通されているカートリッジのほとんどに取り入れられている種類が、この「MM型」。シンプルな構造なので、リーズナブルなものから高級品まで幅広くラインナップされているのが特徴です。
そのため、予算に応じて選べるのも嬉しいポイントと言えるでしょう。自分で簡単に針交換が可能な扱いやすさで、ビギナーにもおすすめです。
MC型
「Moving Coil」の略で、MM型と比べて複雑な仕組みとなっています。
カンチレバーにコイルが巻き付けられており、マグネットの働きによってコイルが動き、針の読み取った情報を読み取る仕組みです。精度が高いので、音切れしにくくクリアな音質が楽しめます。
一方で、製造に手間がかかり値段も高くなりさらに専用のアンプが必要になるなど、高いコスト面が難点と言えるでしょう。
さらに針先だけの交換ができないので、交換したい時にはカートリッジごと交換することになる点も覚えておくと良いですよ。
レコードプレーヤーのパーツにこだわりたい人に向いています。
針の素材の種類
カートリッジのカンチレバーの先には、宝石素材が使われている針(スタイラスチップ)が付いています。レコード盤の溝に直接触れて、音の波形を読み取るレコードプレーヤーの中でも非常に重要な部分です。
カートリッジをレコード針と呼ぶのも、スタイラスチップの形状に理由があると言ってよいでしょう。
スタイラスチップに使われている素材はいくつかあり、それぞれ価格や音色、耐摩耗性などが変わります。
小さくても実は重要なパーツなので適当に選ばず、予算や好みに合わせて適したものを選べば、より満足感が得られるでしょう。
無垢針(ダイヤモンド針)
全体がダイヤモンドでできているので、ダイヤモンド針とも呼ばれています。
音色の特徴としてはクリアかつワイドで、広域の伸びを感じられるでしょう。
軽量で音の立ち上がりが良いのがメリットと言えますが、接合針と比べるとダイヤモンドを多く使っているため、値段は高い傾向にあります。
接合針
針の先端にダイヤモンドを使用し、ベースとなる部分にはチタンなどの硬い金属を用いて接合したものを「接合針」と呼び、ポンテッド針とも言います。
密度のあるエネルギッシュな音色が特徴で、ダイヤモンド針と比較するとダイヤモンドの量が少なく比較的安い価格で購入可能です。重量が多くなるので、金属の種類によって立ち上がりの良さが左右されます。
サファイア針
サファイアでできたスタイラスチップで、ダイヤモンドよりも硬度が低いため加工がしやすく、価格が抑えられるのが特徴的です。
硬度が低い分摩耗が早く、取り替え時期が早く来てしまうため、近年ではあまり使われなくなりました。
針先の形の種類
カートリッジの先端に取り付けられた針、スタイラスチップは素材だけでなく形もいくつか種類があり、特徴もそれぞれ違います。適当に選ぶと思っていた音が再生できない、摩耗が早くてがっかりするなども考えられます。
一度購入したらしばらく使い続けるものだからこそ、購入前に特徴をしっかり確認しておきましょう。
以下に、針先形状の種類とその特徴をご紹介します。
丸針
一般的なレコード針の形状で、コニカル針としても知られている針先です。先端は球形で、ボールペンの先のような円錐の形をしています。
寿命は約200時間で、音質としては低音が安定。標準的なレンジを再生するのに適した汎用性の高さが特徴的です。
前後どちらに再生しても、左右に角度が多少ずれても音割れが起きにくく、ある程度安定したトレースを実現。DJが使う針には丸針が大半を占めるのも、針先がレコードの溝に入り込み過ぎないのが理由です。
針先が他の種類と比べて大きめなので、細かい溝を忠実に再現できずに高音域が曇る、音が歪むといったことが発生しやすいという難点があるので覚えておきましょう。
楕円針
丸針の先を潰すことで、針先の断面が楕円の形をしているのが特徴の針です。音域に深く入り込むことで、高域特性が高まります。
丸針と比較して細かな音溝の起伏をトレースできるので、丸針で発生しやすい音が歪むといった難点を軽減できるのもメリットです。
一方で、丸針と比較すると針先が薄いため、摩耗が速く寿命は約150時間と丸針よりも短めになります。
シバタ針(ラインコンタクト針)
シバタ針の名称は、日本ビクター株式会社の柴田憲男が当時、開発を手掛けたことが由来です。レコード盤と線接触することから、ラインコンタクト針の一種としても知られています。
楕円針より、さらに高性能な針先を目指して開発され、周波数帯域が広く中高音がクリアに再生されるのが特徴的です。当時出回っていたCD-4型式の再生に必要な広い周波数帯域にも対応しています。
また、摩耗が少なく、レコード盤への負荷を抑えられると共に寿命が長いのも特徴です。
SAS針
「Super Analog Atylus Series」の略で、JICO独自のモデルです。レコードのカッティングに用いられるカッター針に近い形状で、音溝と針先の線接触が実現しました。
高音域と低音域の再現性に長けており、広い周波数帯域により忠実な音が再現可能。音溝と接触面積が広いため、忠実に再生するのに役立ちます。
寿命は約500時間と長く使えるのも特徴的です。
レコード針はどこで買う?
レコードを再生するために欠かせないレコード針。「レコードが聴きたいと思って探したらレコードプレーヤーはあったけれど、針が劣化しているので購入したい」という人もいるでしょう。
レコードの針は、レコードプレーヤーを取り扱う家電量販店やオーディオショップ、通信販売などで取り扱っています。
画像で見るだけでなく、実際に手にとって見てみたいという人は、直接店頭で購入するのが良いでしょう。
しかし店舗によっては在庫がない、取り扱いがない、在庫がなくて取り寄せが必要などの場合もあるので、事前に問い合わせをすると安心です。
直接手に触れなくても確実に手に入れたいという場合には、通販サイトが便利ですよ。
通販サイトを見ると
- Amazon
- ヨドバシカメラ
- 楽天市場
などさまざまなサイトで取り扱いがあることが分かります。
JICOの公式サイトや、レコード針を専門に扱う通販サイトでも購入できるので、欲しい型番が決まっているならメーカーのサイトや専門サイトを利用するのも良いでしょう。
店頭ではなかなか販売されていないレアなレコード針も、通販で検索すると案外すぐに見つかることもありますよ。
レコードの針の寿命
レコード針は見た目に損傷が無くても、レコードを聴いていると音飛びが目立ってきたり音の乱れが出てきたりしたら、交換の必要があるかもしれません。
ダイヤモンドなど硬い材質でできていますが、消耗品なのでいつかは寿命を迎えます。種類によってそれぞれ寿命も異なるので要チェックです。
- 丸針:約200時間
- 楕円形針:約150時間
- SAS針:約500時間
- シバタ針:約400時間
- 無垢針(ダイヤモンド針):200時間
寿命以外にもある交換の目安
レコード針に寿命があっても、何回レコードを再生したのかをいちいち覚えている人は少ないですよね。
何時間レコードを再生したか分からない人でも、レコード針の交換目安が分かるポイントがいくつかあるので、以下にご紹介します。
- 以前より音が悪くなった
- 音飛びが頻繁に起こるようになった
- 針の先端に光を当てた時の反射が、以前より強くなった
このような状況になったら、レコード針の替え時の可能性が高いです。レコード針が劣化した状態でそのまま使い続けると、音が悪くなるだけでなくレコード盤に傷をつけることにもなるため、注意しましょう。
ただ、音飛びや音質の劣化は、レコード針だけで引き起こされるものではありません。
下記のような状態でレコードプレーヤーを使っていると、音の劣化や音飛びが発生することもあるので確認してみてください。
- レコード針や、レコードの表面にほこりが付着している
- 針圧が低い
- レコードプレーヤーの設置場所(水平に設置されていない)
「音が飛ぶから針を交換しなければ」とほかの要素を確認せずにレコード針を交換しても、改善されないことも考えられます。
針を交換する前に、レコードプレーヤーの設置位置やほこりが溜まっていないかなどをまずは確認してみましょう。
好みの音色に合わせたレコード針を選ぼう
レコード人気の再燃で、気軽に聴けるCDやスマホのサブスクではなく、あえてレコードプレーヤーを用意してアナログレコードを聴きたいと考えている人もいるでしょう。
レコードを聴くのにレコードプレーヤーは必要ですが、なかでもレコードの溝に直接触れるレコード針は、音質を左右する重要なパーツです。
針先の材質やカートリッジの種類はさまざまで、選び方によって「思っていた音ではない」「好みの音に近づけられた」など満足できるかどうかも変わってきます。
値段や寿命も種類によって異なるので、どれでも同じだろうと適当に選ばず、最高のレコードの音を楽しむためにこだわってみてはいかがでしょう。