- サファイアガラスの特徴を知りたい
- サファイアガラスを使った風防について知りたい
- サファイアガラスを採用した腕時計について知りたい
本記事では、サファイアガラスの特徴を詳しくご紹介!ほかの時計素材との比較や加工技術についても解説します。
サファイアガラスは宝石のサファイアと同じ組成の結晶体で、人工的に作られたためサファイアガラスと呼ばれているもの。傷や熱に強く丈夫であるという特徴から、時計などさまざまな製品に用いられています。
特に高級腕時計の風防として用いられることが多く、各ブランドではサファイアガラスに関連するさまざまな技術が開発されてきました。サファイアガラスについて知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてくださいね。
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サファイアガラスとは
サファイアガラスとは、高純度の酸化アルミニウム(AL2O3)を結晶化させたもののことです。宝石のサファイアも同じ酸化アルミニウムの結晶体ですが、人工的に作られているためサファイアガラスと呼ばれています。サファイアクリスタルと呼ばれることも。
傷に強いという特質から、時計のカバーガラスに使用されることも多い素材です。特に高級腕時計では、文字盤の保護の目的で20世紀半ばにはサファイアガラス(サファイアクリスタル)が採用されました。改良が進んだ現在では、Appleのスマートウォッチなどにも使われています。
サファイアガラスの特徴
サファイアと同じ性質を持つサファイアガラスは、ほかの素材にはないさまざまな特徴を持っています。ここでは、硬度や耐熱性、透過率などの側面からその特徴を解説。高級時計だけでなく、多様な使われ方をする素材としての特徴をみていきます。
ダイヤモンドに近いほどの高い硬度
サファイアガラスは、その高い硬度が最大の特徴。モース硬度9と評価される素材で、この数値よりも硬いのは、モース硬度10のダイヤモンドということをふまえても、その硬さはあきらかです。
そもそも、原材料の酸化アルミニウムの結晶体であるサファイアやルビー自体がダイヤモンドに次いで硬い鉱物。同じ酸化アルミニウムを高温で溶かしてガラス化したサファイアガラスも、同じ硬度を誇っているのです。
硬度が高いという特徴は、カバーガラスなどとして使うと製品の耐久性を上げたり、傷を防ぎやすくしたりできます。高級腕時計など、精密な機器を保護するために最適の素材なのです。
強化ガラスの10倍近い耐熱性
耐熱性もサファイアガラスの特徴のひとつに挙げられます。一般的なガラス(フロートガラス)の耐熱温度が110℃、強化ガラスでも200℃であるのに対して、サファイアガラスの耐熱温度は約2,000℃。比較すると、その高い耐熱性がよくわかります。
この特質も、サファイアガラスの主原料である酸化アルミニウムによるものです。融点が2,072℃と高いため、ガラス化しても優れた耐熱性を保てます。
ただし、熱衝撃についてはそれほど強いとはいえません。「250℃に熱したサファイアガラスを10℃の水に投入するとクラックが発生した」という実験結果も報告されています。日常で使用する範囲では問題ありませんが、急な温度差には気をつけるようにしてください。
可視域だけでなく赤外線に対しても高い透過率
サファイアガラスは、透過率が高いことでも知られています。透過率が高ければ高いほど、透明度も高くなるもの。サファイアガラスは透過率が非常に高く、可視域だけでなく、赤外線の領域でもその透過率の高さが実証されているほどです。
この高い透過率も、酸化アルミニウムの特徴に起因しています。結晶構造が均一に配列されているため、光が屈折しにくいのです。また、サファイアガラスは人工的に作られているため、不純物がほとんどありません。
なお、可視域だけでなく赤外線に対する透過率が高いという点を活かして、光学レンズなどにも使われている素材です。
サファイアガラスとほかの素材の比較
優れた特徴を持つサファイアガラスですが、ほかの素材と比較すると、そのメリットデメリットがより明確になるでしょう。一般的なミネラルガラスやプラスチックと比較すると、硬度が高いため傷がつきにくく、透明度や耐熱性もサファイアガラスが勝っています。
しかし、耐熱性や硬度が高いために、コストが高いという点がサファイアガラスのデメリットです。万が一サファイアガラスに傷がついた場合、硬度が高すぎるため表面を研磨してメンテナンスをするということはできません。
素材の名前 | メリット | デメリット |
---|---|---|
サファイアガラス |
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ミネラルガラス |
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プラスチック |
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それぞれのメリットデメリットを活かして素材を選ぶとよいでしょう。
サファイアガラスを用いた風防の形状
風防とは、時計の文字盤を保護しているカバーのことです。サファイアガラスは、その硬さや傷のつきにくさから、腕時計の風防に採用されることが多い素材。高級腕時計では、技術を駆使してさまざまな形状の風防をサファイアガラスで作っています。
ドーム型
![ドーム型のサファイアガラス](https://uridoki.net/topics/wp-content/uploads/image2-805.jpg)
サファイアガラスの傷に強いという特徴も、日常的に使用するドーム型腕時計には大事なポイント。防水機能を高めるためにも、硬度や丈夫さは大切な要素であり、耐熱性の高さは高温状態でも時計を守るために重要です。
ドーム型の風防にサファイアガラスを用いている腕時計としては、ロレックスのチェリーニ・ムーンフェイズが挙げられます。エレガントでクラシカルなデザインに、立体的なドーム型のサファイアガラスが輝きを与えているモデルです。
カーブ型
![カーブ型のサファイアガラス](https://uridoki.net/topics/wp-content/uploads/image3-592.jpg)
硬く加工がむずかしいサファイアガラスをカーブさせるには、手間ひまがかかるもの。高い技術も必要とされるため、カーブ型風防でサファイアガラスを採用できるのは高級腕時計の証拠でもあります。
カーブ型腕時計として有名なモデルは、フランクミュラーのトノウカーベックスです。フランクミュラーの腕時計のなかでも傑作と名高いモデルで、立体的な3次元構造をサファイアガラスを使って実現しています。
特殊な加工のサファイアガラス
高級腕時計に使われることが多いサファイアガラス。最近では、各メーカーがさまざまな工夫をこらして特殊な加工を施したサファイアガラスを作るようになりました。ここでは、特殊加工であるグリーンサファイアガラスや無反射コーティングなどについてくわしく解説します。
グリーンサファイアガラス
![ロレックスのミルガウス グリーンサファイアガラス](https://uridoki.net/topics/wp-content/uploads/image5-392.jpg)
このグリーンサファイアガラスは、ロレックスのミルガウスの風防に採用され、ロレックスのほかのモデルとも一線を画した印象を与える要因となっています。もともと、ミルガウスは医師や放射線技師などに向けて開発されたモデルで、優れた耐磁性が特徴です。
サファイアガラスのケース
![ウブロのビッグバン サファイアガラス](https://uridoki.net/topics/wp-content/uploads/image1-909.jpg)
サファイアガラスは、その硬度と耐熱性から加工には高度な技術を必要とする素材。ケース全体にサファイアガラスを採用することは難易度が高く、希少性も高くなります。
サファイアガラス製のケースを採用したモデルを発表しているブランドとしては、ブランパンやベル&ロスなどが挙げられますが、なかでも代表的なのは、ウブロのビッグバンシリーズといえるでしょう。
ウブロは、無色透明のケース以外に、パープルやブルーなど色のついたサファイアガラス製ケースを採用したモデルを発表しています。
泡のように膨らんだドーム型風防
![コルム バルブ サファイアガラス](https://uridoki.net/topics/wp-content/uploads/image6-317.jpg)
バブルの風防の厚みは8mm、サファイアガラスを削り出して形状を整えています。通常、風防に用いられるサファイアガラスの厚みが3~4mmであることを考えると、際立った立体性がわかるでしょう。
サファイアガラスの無反射コーティング
無反射コーティングとは、サファイアガラスにきわめて薄くコーティングを施すことで、光の反射を軽減する技術を指します。以前はこのコーティングに緑や青などの色がついていましたが、現在では無色透明も可能です。
窓ガラスに顔が映る現象は多くの人が経験していると思いますが、それはガラスの表面と裏面で光がわずかに反射しているから起こる現象。時計の風防に無反射コーティングの処理を行うと文字盤の視認性を高められることから、高級腕時計で採用されることがあります。
両面と裏面(片面)
光の反射は表面だけでなく、裏面との界面でも起こるため、無反射コーティングを施す方法は、両面と裏面のみの2種類があります。
反射率をもっとも低くできるのは、両面の無反射コーティングです。文字盤の視認性も高まるといえるでしょう。しかし、使っているなかで何かにぶつかるなどして、サファイアガラスの表面に施したコーティングが取れることもあります。
はく離してしまう可能性を考えると、傷がつきにくい裏面のみにコーティングを塗布する方が良いとして、片面のみにコーティングを採用しているモデルもあるのです。この場合、文字の視認性は両面に塗布した場合よりも少し劣ります。
ブランド独自のコーティング
無反射コーティングについても、各時計メーカーが独自の技術を開発して発表しています。シチズンの「クラリティ・コーティング」はその一例です。この無反射コーティングの技術を採用した時計の風防は約99%の光を透過させるので、どんなに光が強い場所でも時刻をはっきり読み取れると謳っています。
セイコーの「スーパークリアコーティング」も、光の反射を99%抑える無反射コーティング技術を採用。サファイアガラスの表裏両面に新開発した透明皮膜を施しています。太陽光や照明がまぶしい場所でも、ガラスの存在を意識させないと謳っている技術です。
サファイアガラスは割れやすい?
ダイヤモンドに次ぐ硬度を誇るサファイアガラスなので、一般的なミネラルガラスよりは高い耐衝撃性があります。しかし、硬度はあくまで表面硬度のこと。傷のつきにくさには定評があるサファイアガラスですが、落下などの衝撃を与えると、割れることもあるのです。
その理由は、主原料が酸化アルミニウムの単一素材であることにも起因しています。結晶構造が均一に配列されているため、打ちどころが悪いとあっという間にひびが入ってしまうのです。硬度が高いからと油断せず、大切に扱うようにしましょう。
サファイアガラスに傷がついた場合は修理へ
傷つきにくい素材として定評のあるサファイアガラスですが、まれに風防などに傷がついてしまうことがあります。硬い素材なので、自分で磨いて対処することはできません。メーカーや専門店へ修理に出すことがおすすめです。
サファイアガラスの風防が傷ついた場合、修理の方法として研磨も挙げられますが、素材自体が硬いため、メーカーや専門店であっても対応できる職人は多くありません。風防全体を取り換えることをすすめられるでしょう。値段はかかりますが、透明性や視認性が高まり、新品同様の輝きが取り戻せることがメリットです。
なお、風防のコーティングの剥がれでも修理に出せます。コーティングは、無反射コーティング以外にも、油汚れや指紋をつきにくくするコーティングが施されている場合もあるので、コーティングを復活させると、視認性も高まるでしょう。
時計以外のサファイアガラスの用途
高級腕時計に使われることが多いサファイアガラスですが、硬度や耐久性、透過率に優れているため、ほかの分野でも多く使われている素材です。
たとえば光学レンズで、その透過率と耐久性からカメラレンズなどにも使用されています。最近ではiPhoneやアップルウォッチなどにも採用されており、液晶ディスプレイの保護ガラスとしても人気が高い素材です。宇宙工学の分野でも採用されており、航空機の窓ガラスや観測窓などはサファイアガラスでできています。
サファイアガラスは身の回りでも使われている
硬度や耐熱性、透過率の高さといった特性を持つサファイアガラスは、人工的に作られたとはいえ宝石のサファイアと原料は同じです。製造にコストがかかるため高級な素材ではあるものの、腕時計の風防やiPhoneなどにも採用されている身近なガラスのひとつとなりつつあります。
この記事では、サファイアガラスの特徴や腕時計で使われている例、腕時計メーカーが独自に開発している技術などを解説しました。硬度が高いとはいえ、傷がまったくつかないわけでなく、落下させると壊れる場合もあるので、注意して扱ってくださいね。
本記事の画像の出典:The Ticken online shop、ジャックロード、ウブロ