この記事で解決できるお悩み
- 着物を正しく着こなしたい
- 右前・左前のどちらが正しいかしっかり覚えたい
- 自分でも着付にチャレンジしてみたい
この記事では、着物の着付の基本である「前合わせ」について、右前・左前のどちらが正しいかを解説します。
着物は着付がむずかしいイメージがあり、なかなか着る機会がない人もいるでしょう。着付で特に間違えやすい点が前合わせです。前合わせを間違うと、マナー違反になってしまう可能性もあります。
記事内では特に、正しい前合わせの覚え方や前合わせに関する疑問など、着付に役立つ情報もあわせて紹介。着物に興味がある人や自分で着付にチャレンジしてみたい人は、ぜひ参考にしてください。
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着物を着付ける前に知ってきたい用語
前合わせについて解説する前に、最低限覚えておきたい用語をご紹介します。
着物の着付けのために知っておきたい用語は次の5つです。
前合わせ以外の4つは、それぞれ着物の部位の名称を指します。
いずれも日常生活ではあまり使わない言葉ですが、着物の着付けにおいてはとても基本的な用語です。
実際に着付けをする前に、まずはこの5つを理解しておきましょう。
前合わせ
「前合わせ」とは、着物の前面部分全体の合わせ方のことです。そして合わせる衣服の前面部分のことを「前身頃」と言います。
洋服ではボタンを使って前身頃を合わせますが、着物では衣服の左右の部分を順番に重ね、腰紐や帯でまとめます。
また前合わせと似た言葉に「衿合わせ(えりあわせ)」があり、こちらは衿元の合わせ方のことです。洋服のシャツで例えると、ボタンをいくつ開けるかといった感覚に似ています。
ちなみに「合わせ」ではなく「袷(あわせ)」という言葉もありますが、こちらは裏地のついた5月から10月に着る着物の種類のことなので、混同しないようご注意ください。
上前
「上前」とは前合わせの中でも上になっている、つまり外側に出ている部分のことです。
下前
「下前」とは、上前とは反対に着物を着た際に下になっている、つまり内側に入っている部分のことです。
この下前が左右どちらになっているかで、このあと解説する「右前」「左前」と着付けの呼び名が変わります。
右前
衣服では、体の右側を覆っている部分を右身頃といいます。そしてこの右身頃を先に合わせる着付けを「右前」といいます。
上に重なっている部分を基準に覚えると左右逆になりややこしいので、内側に入っている部分を基準に覚えるといいでしょう。というのも右前の「前」は、和服では「手前」を指すからです。
なので右身頃が手前にきている着付けが右前と覚えておいてください。
左前
右前とは反対に体の左側を覆っている部分を左身頃といい、この左身頃を先に合わせる着付けを「左前」といいます。
右身頃と同じ様に「自分にとって手前に来ている部分(内側)が左」と覚えておきましょう。
着物の着方は右前・左前どっちが正解?
ここまで、着付けをする際に知っておきたい用語を解説しました。その中でも特に大事なのが「右前」と「左前」です。
着物は右前で着るか左前で着るかが決まっており、これを間違えるとマナー違反になってしまいます。
では「右前」「左前」どちらで着るのが正しいのでしょうか。理由や覚え方とともに詳しく解説します。
着物の前合わせは「右前」が正しい
結論からいうと、「右前」が正しい着物の着方です。右前とは、自分にとって「右側」が手前になっている着方でしたね。
着物は右前で着ると決まったのは、奈良時代にまでさかのぼります。
「続日本紀」によると、719年元正天皇の時代に「初令天下百姓右襟」という法律が発布されました。この法律は「庶民は着物を右前で着るように」という意味をもちます。
当時庶民は右前、貴人(貴族)は左前で着物を着ていたといわれており、これが現代ではすべての人が着物を右前で着るようになった始まりとされています。
「左前」ではいけない理由
「左前」で着物を着てはいけない理由は、左前は亡くなった方が身につける「経帷子(きょうかたびら)」といわれる着物で用いられる着付け方のため、縁起が悪いとされているからです。
「初令天下百姓右襟」によって、奈良時代から庶民は着物を右前で着るようになったと解説しました。
しかし死者は平等であり貴人と同等の扱いをするため左前でよいとされ、これが死装束は左前になった理由だと言われています。
現代においては貴人も庶民もありませんし、右前で統一されているので、生きている人が左前で着物を着るのは縁起が悪く、マナー違反と思われてしまうこともあります。
最近では着物は日常的に着るものではなく、結婚式や入学式、卒業式などの正式な場でしか着ないという人も多いでしょう。
そういった場面ではなおさら縁起が大切にされますので、左前では着ないようお気をつけください。
正しい前合わせを覚えるコツ
着物の正しい着方は「右前」だということはわかりましたが、ただ右前と覚えていても実際に着てみるとどちらが先か意外とわからなくなってしまいます。
ここからは、正しい前合わせを覚えるためのコツをいくつかご紹介します。
ポイントは以下の3つです。
- 相手から見たとき襟元が「y」の形になる
- 柄が鮮やかな方が外側になる
- 右手が襟元にスムーズに入る
全て覚えなくても大丈夫です。覚えやすいと思ったものを、どれか一つ覚えておきましょう。
相手から見たとき襟元が「y」の形になる
一つ目のポイントは、相手から見たとき襟元が「y」の字の形になっているかです。
自分が他人を着付けているときや、反対に誰かに着付けてもらっていると「右が前にくるのは自分にとって?相手にって?」と左右では判断しづらいこともあります。
そんなとき第三者からみて襟元が小文字の「y」の形になっているか、というのは一目でわかりやすい基準です。
また瞬間的に左右を判断するのが苦手な、「左右失認」や「左右盲」と呼ばれる症状をもつ方がいます。
こういった方は左右で判断するよりも「y」の形になっているかの方がイメージしやすく、視覚的に判断しやすいでしょう。
柄が鮮やかな方が外側になる
裾に柄があしらわれている着物は、外に来る部分に柄がたくさん描かれることが多いです。
そのほうが、着物が相手からより美しく見えますよね。
なので着付けが終わったあとに、柄が外からしっかり見えているかを確認してみてください。もし柄が中に隠れている場合は、左前で着てしまっているかもしれません。
ただし柄の描かれていない「色無地の着物」や、柄が全体的に散りばめられている「小紋の着物」などはこの方法では判断しにくいでしょう。
その場合は他のポイントも合わせてチェックしてみてください。
右手が襟元にスムーズに入る
最近では左利きの人を右利きに矯正させることも少なくなりましたが、それでもやはり右利きの人の方が比較的多いのではないでしょうか。
右利きであるという前提で、「利き手(右手)が襟元にスムーズに入るかどうか」も覚えやすい判断方法です。
右前で着付けができていれば左の襟が上になっているはずなので、右手がスッと襟元に入ります。「右手で襟元が調整しやすい」と覚えてもいいかもしれませんね。
男性は普段着ている洋服のシャツと同じような感覚ですが、女性は逆向きになるので注意しましょう。
着物の合わせに関する疑問
ここまで読んで、すべての場面で「右前」が正解なのか、「左前」で着ていい特別な場面はないのかといったことが気になった方もいるかもしれません。
ここからは、そんな着物の前合わせに関するよくある疑問についてお答えします。
洋服のように着物も男女で反対になるのかなど、勘違いして覚えやすいポイントについてもまとめていますので、ぜひチェックしておいてください。
男性の場合は左前でもOK?
シャツなどの洋服だと、男性ものと女性もので上になる部分が左右逆になりますよね。
これと混同して着物でも男女で反対と覚えてしまっている方もいますが、着物の場合は男女どちらとも左が上、つまり「右前」が正解です。
洋服が男女で逆なのは、13世紀ヨーロッパの宮廷時代が起源といわれています。当時、男性は自分で上着をとめるため、右利きで着やすいよう前ボタンが右についており、上流階級の女性は使用人に着せてもらうので逆になったという説があります。
しかし繰り返しになりますが、着物は男女ともに右前が正解なので間違えないように注意しましょう。
浴衣も右前が正解?
浴衣も着物と同じように「右前」が正解です。
着物は成人式や冠婚葬祭などで着るフォーマルウェアというイメージがあるのに対し、浴衣はおしゃれ着や夏のカジュアルウェアといったイメージがあります。
なので「正しい着付けなんて気にしなくても」と思われるかもしれませんが、正しい着こなしをしてこそのおしゃれ着ではないでしょうか。
また夏には浴衣姿の写真がSNSなどでたくさん見られますが、反転機能がついたカメラアプリで写真を撮ると左右逆になり左前に見えてしまいます。
これらの写真を参考に着付けをしてしまうと、ご自身の着付けも左前になってしまうのでご注意ください。
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着物の右前・左前は着付の基礎知識です。着物は右前で着ることが正解。正しく右前で着ると、相手からは襟元が「y」に見えたり柄が華やかに見えたりと、一目見て分かりやすいためすぐに覚えられますよ。
洋服の前合わせは男女で異なりますが、着物は男女共通で右前です。左前は縁起が悪いとされています。特にお祝いの場などではマナー違反と感じられる場合もあり、注意が必要です。
着物は着る機会が少ない分、ルールやマナーがむずかしいと思われることもありますが、「とにかく右前でよい」と考えればハードルが下がります。ぜひ気楽に和装にチャレンジしてくださいね。
本記事の画像・買取実績・価格・口コミなどの出典
出典:おたからや,Google