有給休暇の買取は原則違法!認められるケースや計算方法

  • 2025年3月6日
この記事で解決できるお悩み
  • 有給休暇は買取できるのかを知りたい
  • 有給休暇の買取の違法性が知りたい
  • 有給休暇を取らせてもらえない場合の対処法を知りたい

本記事では有給休暇の買取は違法ということ、および買取が認められるケースや買取金額の計算方法について解説します。

使いきれなかった有給休暇を、会社に買取ってもらおうと考える人もいるかもしれませんが、これは基本的には違法です。しかし、条件次第では買取が認められるケースもあります。

買取が認められるケースや買取金額の計算方法、有給休暇を使い切るための対処法が知りたい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

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そもそも有給休暇とは

有給休暇とは業種や業態、正社員やパートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たしたすべての労働者に対して与えられる休暇のことです。

有給休暇の付与日数や条件は労働基準法で決まっています。有給休暇を取得するためには以下の2つの条件にあてはまらないといけません。

  1. 雇入れの日から6ヶ月継続勤務
  2. 全労働日の8割以上勤務

また、有給休暇を取得する日は労働者が希望日を指定できますが、営業に支障をきたす場合には拒否されることもあります。

有給休暇の買取は基本的には違法となる

労働基準法では「有給休暇を与えなければならない」と規定されているので、有給休暇の代わりに金銭を支給しても有給休暇を取得したことにはなりません。よって違法となります。

有給休暇の目的は、従業員が日頃の労動でたまった身体の疲れやストレスを回復させること。買取を許してしまえば、本来の趣旨とかけ離れてしまいます。

また、買取が発生した場合、有給休暇を使えば正規の値段の給与がもらえるところを、雇用主が従業員から安く買取りすることも考えられるでしょう。雇用主が立場を利用して従業員が不利になるような状況をつくることは許されることではありません。

有給休暇の買取が違法にならない条件

有給休暇関連の書類

有給休暇の買取は本来は違法ですが、違法にならないケースもあります。下記の条件に当てはまれば有給休暇の買取が可能です。

該当する人で有給休暇を消化できない場合は、雇用主に買取の相談をしてみてはいかがでしょうか。

時効になっている有給休暇の場合

年内に有給休暇を消化しきれない場合は、翌年に繰り越すことが可能です。しかし、有給休暇には使用期限があります。有給休暇を取得した日から2年間で時効になるので、本来ならば期限内に消化しなくてはいけません。

しかし、仕事が忙しくて消化できなかった有給休暇を取得をしようとしても、時効となった有給休暇を消化することは不可能です。

時効となった有給休暇の買取をしたとしても、労働者が不利になるようなことはないので違法にはなりません。

法律で定められた日数を上回る有給休暇の場合

有給休暇の付与日数は勤続年数によって変わり、法律で日数が定められています。勤続年数が増えるごとに付与日数も増える仕組みです。また、週の稼働数や稼働時間によっても付与日数は変わります。

通常の労働者の場合

継続勤務年数(年) 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数(日) 10 11 12 14 16 18 20

週の労働数が4日以下かつ30時間未満の場合

週所定
労働日数
1年間の
所定労働日数
連続勤務年数(年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5
以上




(日)
4日 169〜216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121〜168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日〜120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日〜72日 1 2 2 2 3 3 3

法律で定められた日数を上回る分の買取は違法にはなりません。例えば、勤続年数が5年の人に有給休暇が20日付与された場合、法律で定められた16日分は買取ができませんが、夏期休暇などで会社から独自に付与された4日分については買取が可能です。

退職時に未消化分の有給休暇がある場合

引き継ぎなどの関係で、退職時に有給休暇を消化しきれなかった場合は、残った分の有給休暇の買取が可能です。退職後に有給休暇を消化することは不可能なので、買取をしたとしても違法にはなりません。

ただ、買取については会社によって対応がさまざまです。有給休暇が多く残っている場合は、なるべく使い切った方がよいでしょう。

有給休暇の買取金額の計算方法

有給休暇を買取してもらうと、いくらになるのか気になるのではないでしょうか。買取金額の計算方法は3パターンあります。それぞれのパターンについて解説をするので、下記の内容を参考にしてみましょう。

通常賃金での計算

通常賃金とは、決められた労働時間を働いたときにもらえる賃金のことで、「時給制」、「日給制」、「月給制」などがあります。通常賃金には、ボーナスや残業代などは含まれていません。

月給性で有給休暇の買取金額を計算する場合は以下の計算式をつかうと算出が可能です。

  1. 月給÷労動日数=通常賃金
  2. 通常賃金×有給休暇日数=有給休暇の買取金額

月給と労働日数を使って計算をするので、毎日のように残業をする人やボーナスが多い人は、あまり得をしない計算方法といえます。

平均賃金での計算

平均賃金とは、基本給に通勤手当や残業代などをプラスした賃金の過去3ヶ月分の総額を、その期間の総日数で割ったものです。手当や補償を算出する際に使用されます。ボーナスや、臨時の見舞金などは含まれません。

平均賃金で有給休暇の買取金額を計算する場合は以下の計算式をつかいます。

  1. 過去3ヶ月間に支払われた賃金の総額÷その期間の総日数=平均賃金
  2. 平均賃金×有給休暇日数=有給休暇の買取金額

標準報酬月額での計算

標準報酬月額とは、その年の4〜6月の3ヶ月間の賃金の合計額を3(3ヶ月)で割り、それを地域ごとに設定している「保険料額表」の区分に当てはめて算出したものです。健康保険料や厚生年金保険料の算定に使われます。

標準報酬月額で有給休暇の買取金額を計算する場合は以下の計算式をつかうと算出が可能です。

  1. 標準報酬月額÷月の日数=日割りの標準報酬月額
  2. 日割りの標準報酬月額×有給休暇日数=有給休暇の買取金額

有給休暇買取の企業側メリット

有給休暇の買取は、労働者でけだなく企業側にもメリットがあります。「社会保険料」と「トラブル回避」の2点から企業側のメリットを解説するので、有給休暇の買取を会社と相談する際の交渉材料に使ってみましょう。

社会保険料の負担軽減

退職が決定している場合に、退職日までの残りの期間を有給休暇の消化につかう人も多くいます。有給休暇を消化している間は会社に在職しているため、その間も社会保険料を負担しなければなりません。

しかし、出勤最終日に残っている有給休暇をすべて買取をして退職日を前倒しすれば、会社は社会保険料の負担を軽減できます。

トラブル回避

有給休暇を消化中でも、労働者は会社に在籍しています。突然気持ちが変わり、退職を取りやめたいと言いだしたり、退職日までに有給休暇を消化できなかったりすることでトラブルになる可能性もゼロではありません。

残っている有給休暇のすべてを買取することで、余計なトラブルを回避できるので企業としてもメリットといえます。

有給休暇買取の労働者側メリット

労働者側にとってのメリットは以下のとおりです。

  • 所得税がかからない
  • 次の勤務先がある場合にスムーズに移行できる

通常通り有給休暇を消化する場合は所得税がかかります。一方有給休暇を会社に買取してもらう場合、退職所得に該当しますが、退職金は40万円の非課税枠があるため、税金がかからないことがあるのです。

また、退職する人のなかには次の勤務先が決まっている方も多いでしょうが、そのような場合、有給休暇を買取してもらえば次の会社への早い在籍が可能です。

有給休暇買取の注意点

有給休暇関連の書類

有給休暇は条件が合えば買取が可能ですが、注意しなければいけないことも多いです。知らずに買取を選択してしまうと損をしたり違法になったりすることも考えられます。

買取をする場合は以下のことには十分注意をしましょう。

有給休暇買取は企業の義務ではない

有給休暇買取は企業の義務ではないため、会社側が買取を拒否した場合は、買取をしてもらえません。法律上でも買取を認めるような記載はなく、いくら不満があったとしても、どうにもならないのが現状です。

法律で買取を認めてしまえば、会社が金銭と引き換えに労働者を休ませないことが起きる可能性があります。このような行為は有給休暇の趣旨に反するので、法律上で買取を認めていません。

有給休暇買取の予約は違法

企業が労働者の有給休暇を金銭と引き換えに買取をする行為は、有給休暇の趣旨である労働者の日頃の労働でたまった心身の疲れを回復させることにはなりません。

そのため有給休暇の買取を予約して、有給休暇の日数を減らしたり、決められた有給休暇の日数を与えなかったりすると、労働基準法第39条違反になります。

買取った有給休暇は賞与として計上する

有給休暇を買取したときの代金は、給料ではなく賞与として扱われます。買取の流れは以下のとおりです。

  1. 会社側が労働者から賞与として有給休暇を買取る
  2. 会社側は5日以内に、賞与支払届を事業所の所在地を管轄する年金事務所へ提出する
  3. 会社側は労働者に給与明細書と別に賞与明細書を作成して渡す

有給休暇買取のルールは就業規則に規定する

企業は有給休暇の買取についてのトラブルをなくすために、ルールをつくり就業規則に規定しておくとよいでしょう。有給休暇は使い切ることが望ましいですが、仕事が忙しかったり、人手がたりなかったりする場合には、なかなか有給休暇をつかうことができません。

期限を過ぎた有給休暇の買取ルールを会社全体で周知しておくことで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

有給休暇を買取ではなく消化するための対処法

有給休暇は、本来ならば買取をするものではなく消化するものです。すべてを消化することはむずかしいかもしれませんができるだけ多くの有給休暇を消化するための努力は、会社全体で行うべきです。対処法を解説するので参考にしてください。

【労働者】企業が有給休暇を取らせてくれない場合

仕事が忙しく毎日残業をしているような会社や部署の場合は、有給休暇を取りたくても上司が取らせてくれないこともあるでしょう。

しかし、労働基準法で有給休暇を取得する際には、労働者が指定する日に与えなければならないとされています。事業の通常業務の妨げになる場合には、取得時期の変更も仕方がありませんが、そうでない場合は違法です。

いくら伝えても取らせてもらえないのであれば、労働組合や社内の相談窓口、労働基準監督署に相談をして改善を要求しましょう。

【企業】従業員が有給休暇を取得しやすくするには

従業員が有給休暇を取得しやすくするには、会社側が取得しやすい環境やルールづくりをすることが大切です。上司が有給休暇を取得しないと、部下も言い出しづらいので、上司が率先して有給休暇を取得するようにしましょう。

また、従業員の有給休暇の取得状況を把握しておくことも必要です。消化していない有給休暇がたくさんある従業員に対して、取得するように声をかけるだけでも、雰囲気はかなりかわります。有給休暇取得計画表などをつくるとわかりやすいでしょう。

有給休暇の買取は原則違法になるので消化しよう

有給休暇の買取は原則違法になるということを解説しました。有給休暇とは、労働者の心身の疲労を回復するためにあるものと労働基準法に記載されています。

有給休暇を買取する行為は、労働基準法の趣旨に反するので違法です。ただし時効になった際や、退職時に消化しきれない場合、また会社独自の有給休暇については、買取が認められています。

とはいえ有給休暇は労働者に与えられた権利。できるだけ疲れを癒したり、趣味や家族との時間に使ったりして有意義に消化しましょう。

木暮康雄 (監修者)

ウリドキ株式会社代表取締役。ウリドキプラスの発行人でもある。
リユース業界での起業・事業運営の経験が豊富でリユースの専門家としてのメディア出演歴も多数。
著書に「リユース革命」(幻冬舎)。自身が運営する「リユースチャンネル」は登録者数1万人を突破。

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