2024年から新しいNISA制度が始まり、日本では投資への関心が高まっています。なかには投資を始めるか検討している人もいるでしょう。その一方で「本当に投資を初めて損をしないだろうか」という不安もつきまといますよね。
この記事では、有名な金融商品のひとつ「投資信託」をおすすめしない理由を解説します。
「初心者でも投資信託は始めやすい」というワードを目にしたことはないでしょうか。実は、投資信託はメリットばかりではありません。投資信託の内容を理解して、正しい知識をつけて投資を始めてください。
投資信託の仕組みや基本的な知識
投資を始めると言っても、株式・国債・純金など、投資方法が多くて混乱してしまいますよね。まずは投資信託とほかの投資の違いについて理解しましょう。基本的な仕組みを理解して、投資信託への疑問を解消してください。
ほかの投資方法との違い
投資信託の投資方法を端的に表すと「プロに資金を渡して運用してもらう投資手法」です。投資と言えば自身で投資先を決めて運用するイメージがありますが、投資信託はプロが運用先を決めることが特徴でしょう。
投資信託にも複数の種類があり、株式・不動産・債券などが代表的です。株式を例に挙げると、個人で株を運用する場合は、メルカリ・楽天・トヨタのように、投資先を自身で決める必要があります。ですが、投資信託では投資先はプロが決めるのです。
不動産の投資信託では、投資のプロがホテルやビル、商業施設などに投資を行います。そのため、不動産の知識がなくても投資できることが特徴です。このように投資信託はプロが運用していると覚えておきましょう。
基本的な利益の発生方法や仕組み
この記事で、投資信託はプロが資金を運用すると伝えましたが、流れを説明すると以下のようになります。
- 投資の流れ
投資家 → 証券会社 → プロの投資家 → 対象商品へ投資 - 投資後のイメージ
対象商品から利益が出る → 証券会社を通じて利益を得る
おおまかな流れは上記の通りです。具体的にはプロの投資家(運用会社)が、投資家のお金を預かる信託銀行に運用の指示を出します。信託銀行は指示通りにお金を運用することで、利益が生まれるのです。
投資信託は多くの投資家からお金を集めることで大規模の資産が集まり、複数の投資先への分散投資を可能としています。投資先をひとつにしぼるとリスクが高くなりますが、分散することでリスクの軽減が期待できることも特徴でしょう。
投資信託をおすすめしない理由や想定されるリスク
ここまでは投資信託の仕組みや流れを説明しましたが、想定されるリスクについても紹介します。
- 信託をするための委託料が必要
- 短期間での利益が見込みにくい
- 元本が保証されない
- 保有しているだけでお金がかかる
- 選ぶには数が多い
メリットばかりではないので、より詳しく投資信託を理解しましょう。
信託をするための委託料が必要
投資信託の仕組みでも説明しましたが、複数の会社が携わることで投資信託は成り立っています。
- 証券会社(商品を販売する会社)
- 運用会社(プロの投資家)
- 信託銀行(投資家のお金を預かる銀行)
上記の会社は無償で投資家の資金を運用しているわけではありません。投資家から複数の手数料を徴収することで、利益を得ています。たとえば、販売時における委託料がそのひとつです。
目安となる委託料は、購入時の2〜3%と言われています。仮に100万円の商品を購入すると、追加で2〜3万円の支払いが必要です。貯金に慣れている人は、委託料に抵抗を感じる人もいるかもしれません。
なかには、委託料のかからない投資信託もありますが、基本的には委託料が発生することを覚えておきましょう。
短期間での利益が見込みにくい
投資を始めたい人のなかには「短期間で大金を稼ぎたい」と思っている人もいるかもしれません。ですが、投資信託で短期間で荒稼ぎすることはむずかしいでしょう。
投資をするうえで覚えておきたい用語が「平均利回り」です。平均利回りとは、投資金額に対してどれだけの収益を上げたかの指標になります。以下は具体例です。
- 投資した100万円が110万円になったケース
10万円(値上がりしたお金) ÷ 100万円(投資額) × 100 = 10(平均利回り)
投資信託の年間における平均利回りは3〜10%と言われています。100万円を預けた場合は、3〜10万円の利益が平均値です。そのため、短期間で大金を稼ぐ手法には向いていません。商品の種類にもよりますが、投資信託は長期視点で投資したい人に向いているでしょう。
元本が保証されない
投資信託は預貯金とは違って、元本が保証されていません。元本とは預け入れたお金のことです。たとえば、銀行の預金は例外を除いて元本は保証されますが、投資信託は100万円のお金を預けても、100万円以下の金額しか受け取れないリスクがあります。
株価を例に考えてみましょう。株価は毎日のように変動しています。たとえば、トヨタ自動車の株を1株4,000円のときに、100株買ったとすれば合計40万円です。株を手放すときに1株3,500円なら、合計35万円で5万円の損失が出ます。
投資信託の株式も同じで、株価の値動きによって受け取れる額は固定ではありません。そのため、元本割れのリスクを受け入れられない人には向かないでしょう。
保有しているだけでお金がかかる
運営会社の収益源のひとつが手数料(信託報酬)です。手数料は預けたお金から日々差し引かれます。そのため、購入時にどれくらいの手数料がかかるかの確認は必須でしょう。
投資信託の手数料の平均は年率0.5〜2.5%と言われており、手数料1.5%の商品に100万円を投資すれば、1万5千円の支払いが必要です。手数料は収益が出なくても支払いが生じます。
一般的に貯金は保有しているだけなら手数料はかかりません。投資信託だと数%とはいえ手数料がかかるので注意してください。なかには手数料が0.1〜0.3%程度に抑えられた商品もあります。投資信託をどうしても始めたい人は、手数料も考慮したうえで購入を検討しましょう。
選ぶには数が多い
投資信託はプロに運用してもらうため、投資に関する専門的な知識が低くても気軽に始められるかもしれません。ですが、証券会社や商品については、数ある中から投資家自身で決める必要があります。
証券会社の数は2022年5月末日時点で271社で、証券会社を決めるだけでも大変でしょう。また、商品数はそれ以上の数があります。楽天証券の投資信託の商品数は2024年4月時点で2,500以上。これだけの数から、投資初心者が商品を決めることは簡単ではありません。
商品のラインナップは証券会社の魅力を高めるうえで重要ですが、初心者が始めるには少しハードルが高いですよね。証券会社や商品の選択を手間に感じる人には、向いていない投資手法と言えそうです。
投資初心者にはおすすめできない投資信託商品
投資初心者はなるべくリスクの低い状態で投資信託を始めたいですよね。ここでは初心者におすすめできない投資信託商品を紹介します。
- 毎月分配型のもの
- 手数料が高いもの
- 銀行が強くおすすめしているもの
- アクティブファンド
- ファンドラップ
それぞれのリスクについて、少しずつ理解を深めてください。
毎月分配型のもの
毎月分配型とは、1ヶ月ごとに収益の一部が分配される投資信託です。毎月、少しでもお小遣いがほしいと思う人には理想的な投資信託かもしれません。ですが、注意も必要です。分配金はすべてが収益とは限らず、元本(投資したお金)が含まれる可能性もあります。
たとえば、分配金が1万円で収益が5千円だと、残りの5千円は元本の払戻しです。元本が払い戻されるということは、投資額が減ることを意味するので、長期的に見ると当初の予定より収益が減る可能性もあるでしょう。そのため、長期視点で投資を行う場合には毎月分配型はおすすめしません。
手数料が高いもの
投資信託の平均的な手数料は年率0.5〜2.5%と言われています。数字だけ見ると高くは感じないかもしれませんが、油断してはいけません。たとえば、手数料が2.5%の商品を100万円分購入し、年間2%の利益が出たとします。このケースだと利益が2万円、手数料2万5千円のため、5千円の損失です。
投資信託の平均利回り(収益)は3〜10%のため、手数料が高いものを選べば収益にも影響します。そのため、投資信託を始めるときは手数料がなるべく安い商品を選びましょう。
銀行が強くおすすめしているもの
投資信託の購入先は主に、証券会社と銀行です。初心者なら「どっちで購入すればいいの」と疑問を持つかもしれません。結論を言うと、初心者は銀行での購入は避けることをおすすめします。
銀行の販売方法は基本的に対面取引です。そのため、人件費・販売店舗など、多くの費用がかかるため、手数料が高い傾向にあります。
また、手数料の高い商品を勧められる可能性もあり、銀行での取引は注意が必要です。銀行で投資信託の商品を勧められたら即決せずに、証券会社の商品と比較しましょう。
アクティブファンド
投資信託の種類は大きく分けて2種類あります。特徴は以下の通りです。
インデックスファンド
- 安定した収益を目標としている
- リスクが低く、手数料が安い
アクティブファンド
- より高い収益を目標としている
- リスクが高く、手数料が高い
アクティブファンドはより高い収益を目標とするため、リスク・手数料ともに割高の傾向にあります。投資経験のない人は、リスクが低いインデックスファンドがおすすめです。
ファンドラップ
ファンドラップとは「ファンド = 投資信託」「ラップ = 包む」という意味で、複数の商品を組み合わせて運用する投資信託のことです。リスクを分散し、投資家のニーズに合った組み合わせで運用できるため、魅力的な商品のひとつと言えるでしょう。
しかし、投資初心者にはハードルが高いです。一般的にファンドラップは最低投資金額が高く、300〜500万円ほどの資金が必要とされます。投資は無理のない範囲で行うことが大切です。自己資金に見合った投資を行いましょう。
投資初心者におすすめの投資商品
ここまで投資信託についてのリスクを紹介しましたが、次は投資初心者におすすめの投資商品について解説します。
- 外貨預金
- 個人向け国債
- 積み立て投資
それぞれの特徴やリスクについて理解し、投資のスタートに役立ててください。
外貨預金
外貨預金は仕組みが分かりやすく、初心者でも始めやすい投資方法と言われています。外貨とは外国のお金のことで、外貨を買うことで利益を得る仕組みです。アメリカドルを例に紹介します。
- 1ドル150円のアメリカドルを1万ドル購入
※日本円で合計150万円分を購入 - 1ドル170円のときにアメリカドルをすべて(1万ドル)払戻し
※日本円で合計170万円分の払戻し - 170万円(払戻し金) – 150万円(購入金額) = 20万円(収益)
上記のように外貨を購入し、購入時よりも高い金額で払戻して収益を得るシンプルな仕組みです。ただし、購入時よりも外貨の金額が下がれば、損失が出ます。外貨預金をするときは過去の値動きも確認し、リスクを受け入れたうえで行いましょう。
個人向け国債
個人向け国債は投資信託に比べてリスクが低く、初心者にとって魅力的な金融商品のひとつでしょう。多くの金融商品は元本割れ(投資金額が満額返金されない)のリスクがありますが、個人向け国債は指定された期間内に手放さなければ元本が保証されます。
個人向け国債は以下3種類から購入可能です。
種類 | 金利 |
---|---|
満期3年タイプ | 固定金利 |
満期5年タイプ | 固定金利 |
満期10年タイプ | 変動金利 |
半年ごとに利子の支払いがあり、堅実にお金を増やせることも魅力でしょう。
デメリットは、大きなリターンを期待できないこと、購入から1年間は換金できないことです。金利は1%に満たないことがほとんどなので、投資信託に比べれば期待できるリターンは低いでしょう。
ですが、リスクを最小限に抑えられるので、投資初心者は購入を検討する価値がありそうです。
積み立て投資
基本的に投資は長期間にコツコツ行うことが大切。そこでおすすめになる投資が、毎月一定額を投資する積み立て投資です。最近はiDeCoやNISAなど、税制上の優遇を受けられる商品が注目されています。
iDeCoは20〜65歳の人が対象で、老後の資金を貯めるのに有効です。ただし、投資上限額が低めに設定されていること、原則60歳まで引き出せない点にも注意しましょう。
NISAもおすすめの積み立て投資です。iDeCoとNISAの特徴は運用益が非課税であること。投資信託は運用で得た収益に20.315%の税金が課税されるので、非課税で運用できることは大きなメリットでしょう。
※NISAにも投資上限額があり、旧制度のNISAは非課税期間が限定されています。
このように税制上有利な積み立て投資を始めることで、投資に徐々に慣れてはいかがでしょうか。
投資信託をおすすめできない人の特徴
投資信託の平均利回り(収益)は3〜10%とされています。そのため、パチンコや競馬のギャンブルのように、1日で多額のお金がほしい人には向かないでしょう。
生活資金に余裕がない人にもおすすめできません。投資信託は資金に余裕のある人が、長期的な運用を目的とした金融商品です。利回りが5%の場合、300万円を1年間預けても利益は15万円ですが、20年預ければ300万円になります。そのため、長期運用する前提で始めることが大切です。
また、値動きが気になる人も避けたほうが良いでしょう。平均利回りは3〜10%と説明しましたが、短期的に見れば大幅な損失を受ける可能性もあります。日々の値動きで不安になる人は、無理に投資信託を始める必要はないでしょう。
投資信託はリスクも高い商品なのをまずは理解しよう!
投資信託はリスクも高く、想定外の損失を受ける可能性もあります。しかし、投資信託にはメリットもあるので、メリットとデメリットの両方を考慮したうえで、購入を検討しましょう。
また、投資信託といっても商品数は数多くあります。委託料、手数料、投資対象がそれぞれ異なるので、詳細を確認するように意識しましょう。
投資に絶対はなく、自己責任で行うことが重要です。この記事を参考にしつつ、納得いく形で投資を始めてください。