名作少年漫画として今なお評価の高い「うしおととら」。妖怪モノ漫画としても日本を代表する存在です。
20年の時を経てテレビアニメ化が決定した影響か、買取価格も全巻セット(ワイド版)で5,500円と右肩上がりを見せています。アニメ化の出来次第では新規読者が増え、さらに買取価格が高騰するのではないでしょうか。
しかし、連載終了から20年が経ち、名前は知っているけど読んだことは無いという人も多いかもしれません。未読の方も、アニメが始まる前に是非一読されてみてはいかがですか?
王道少年漫画
嘘が大嫌いで真っ直ぐな性格の主人公・蒼月潮。
500年間蔵の中で獣の槍に封じられていた2000年を生きる大妖怪・とら。
この二人の出会いから物語は始まります。
最初は、身近に起こる妖怪絡みの事件を解決していくという妖怪退治モノの王道を進みますが、母の秘密を知るために北海道・旭川に旅立つ辺りから、徐々に潮ととら、獣の槍と、最後の敵・白面の者との2000年以上に渡る壮大な因縁へと発展していきます。
熱い展開と緻密な伏線
この漫画の肝は何と言っても少年漫画的な熱さと、緻密に張り巡らされた伏線です。
主人公の潮はよく笑い、時に泣き、許せない敵には怒りを顕にします。そして、正義感強くひたすら真っ直ぐに自分の信念を貫きます。
そんな潮とは対照的に、憎まれ口を叩き、最初は潮に取り憑いて喰ってやろうとするとら。
しかし、事あるごとに厄介事に首を突っ込む潮を、文句を言いつつも必ず最後には手助けするとらはツンデレの鑑とも評されます。
対照的なコンビが反目し合いながらも、共に戦っていく間に徐々に絆を芽生えさせるというのも、少年漫画ならではの熱さを感じさせます。
さらに、タイムスリップの仕掛けを巧みに使い、偶然と思えた潮ととら、獣の槍の出会いに必然性をもたらした事や、旅の途中で出会う個性的な登場人物、いくつもの散りばめられた謎、それら全ての伏線を終盤に向けて一気に収束させる構成力は圧巻です。
漫画家・藤田和日郎の評価を固めた本作
漫画家・藤田和日郎の初連載であり代表作でもある本作。荒削りで力強い画風と、いくつもの伏線を張り巡らせた壮大なスケールのストーリーはこの頃からすでに確立されています。
少年漫画的な王道展開に加え、綿密に計算された物語、その全体的な完成度の高さが今なお高い評価を受け続ける理由ではないでしょうか。