最近では、若い方にも人気が高まっているレコード。
今回はウリドキ株式会社代表の木暮がイーベイ・ジャパンでレコードを一番販売しているFTF株式会社の武井社長とともに、日本とニューヨークのレコード買取店経営のむずかしさや買取方法の違い。そして、レコードを含めたリユース業界のこれからについて対談しました。
2020.3.10収録の動画を基に記事化しています。
FTFレコードとは
『逆越境販売』の老舗
ウリドキ木暮です。
本日はレコード買取で有名なFTFの武井社長にお越し頂きました。宜しくお願いします!
FTFさんといえば、最近だと6月にオープンされる宮下パークにもご出店が決まったという事で、おめでとうございます!
簡単に御社がどんな事をやっている会社なのかを教えて頂けますでしょうか?
1994年から中古のレコード屋さんをやってまして、今年で25年になります。
最初はアメリカやヨーロッパで買い付けてきたものを国内で売るスタイルだったのですが、だんだんインターネットの登場で価格の差がなくなったりした事から商売が難しくなってきました。
しかし、海外で日本製のレコードが高く売れると知っていたので、逆に国内で仕入れて海外に売るようになったっていうようないきさつですね。
いえ、海外に買い付けに行って国内で売る「逆越境販売」みたいな感じでしたね。
なるほど!どの辺りで買い付けをされていたんですか?
僕はだいたいロンドンとロサンゼルスでした。向こうにレコードがいっぱいあって、それを仕入れて国内で売るっていう感じでした。
当時はいくらぐらいで仕入れて、いくらぐらいで売れてたんですか?
最初の頃は数ドルで仕入れたものが約2~3,000円になるって感じでした。
渋谷にもそういうレコード屋さんが当時たくさんあったので、海外で鉢合わせする事もありました(笑)。
いわゆるヒップホップが90年代の渋谷で流行って、渋谷にレコード屋が増えた背景がありますね。
御社ってリユース業界の老舗中の老舗ですよね!レコードといえば御社ってイメージで、業界だと知らない人いないですもん。
国内で買取を始めたきっかけ
最近だとeBayさんなんかともかなり販売実績がありますよね?
そうですね。アメリカやヨーロッパで日本のレコードが人気あるのを知っていたので、国内で買取したものをeBayで売ってだんだん売上が伸びた感じですね。
全国的に始めたのは2012年くらいからですね。それまでは殆どやっていなかったです。
意外と最近なんですね!それは何かきっかけがあったからなんですか?
結局eBayで売るために仕入れるっていう所もありますし、ちょうどその頃から内外価格差がなくなってきて、向こうで仕入れても利益が出にくくなってきたっていう部分もあります。
あとは2010年頃からレコード屋さんの店舗数がかなり減り始めて、レコードを売りたくても売る場所がないっていうお客さんの声が多かった事もあって、郵送買取を全国的に展開した経緯があります。
じゃどちらかというとユーザーとか周りからの買取をしてほしいというニーズが強くて、これがビジネスとしてもいけるだろうという事で決断された感じですね?
そうですね。あと結構みんなレコード自体を捨てちゃったりして、すごくもったいないなと思っていたので、それだったらもうちょっと本格的に広告を出して、捨てられるレコードを救おうという所もありました。
意外な価値があるレコードの”あれ”
我々のリユース業界ってあらゆるジャンルをサポートさせてもらってますけど、レコードっていうジャンルは結構ニッチな商材のイメージが強くて、レコードを売ったり買ったりする人ってどんな人なんですか?
レコードコレクターやDJの方がほとんどですね。最近は20代や30代の若い世代の方達もレコードを買い始めています。
少しずつその傾向が増えてますね。アイドルの新譜とかをレコード屋で売ったりする事もあるみたいなので。
そうなんですね!レコードって二次流通の市場はどのくらいあるんですかね?
そんなにあるんですか!?じゃ本当にちょっと前のスマホと同じぐらい市場がある感じですね?
過去に相当作られたものが流通してるというのもあるので、スマホと一緒かはちょっとどうかな・・・(笑)?
そっか(笑)。ちなみに価値が高いレコードってどういうものですか?
一般的にはちゃんと帯が付いていて、解説書とかライナーノートって言われてる紙が入っていて、ジャンル的には洋楽ロックとか日本人ジャズとかですかね。
そういえばこの間、武井社長NHKに出られてましたよね?その時にも帯が付いているレコードが海外でものすごい価値になるとおっしゃってましたよね。
ビートルズの昔の帯付きは今はもうほとんど世の中にないって事ですか?
聴いたり保管する時に帯が邪魔で取っちゃって、現存数が少ないっていう事で価値が出てるみたいですね。
なるほど。やっぱりコアなファンの人達は帯付きっていうだけで価値が大きく上がるんですか?
そうですね。結局おもちゃなんかも箱付きの完品だと高いっていうのと同じだと思います。
帯のあるなしでどのくらい価格って違うんですか?
一般的に言われてるのは帯付きで5万円、帯なしで100円とかですね。
えっ!?帯だけで価値が500倍も違うんですか!?
そうなんです。昔はカラーコピーして売ってる人とかもいたり・・・。
それは違法ですけどね(笑)。そんなに価値が変わっちゃうんですか?
もちろんそれは極端な例ですけど、でも一般的にも2~3割以上は違うと思いますね。
レコード集めのコツ
確かにフィギュアなんかも箱があるかどうかで価値が全く変わりますもんね!
ちなみに今までレコード買取を主としてやられてきたと思うのですが、これやって成功した事ってありますか?
eBayって世界中にお客さんがいるんで、こんなレコード売れるの?っていうような知らない外国人のレコードも、eBayに出したらその国のスーパースターだったりして値段が高騰した事もありました。
そういうレコードを集めるコツみたいなものってあるんですか?
でも広告出してもすぐ真似されるんで色々大変なんですよ。
レコード買取業界ってもうレッドオーシャンですか?
ニューヨークのレコードについて
ニューヨークで売れた意外なレコード
それでも25年やられているわけじゃないですか。御社って店舗も色々持たれてますよね?
店舗は渋谷と下北沢とニューヨーク。渋谷と宮下が買取専門店ですね。
ニューヨークにも店舗があるって印象深いなと思うんですけど、いつからニューヨークに店舗を出されたんですか?
そうですね。eBayでアメリカにいっぱいお客さんがいたんで、これなら現地に出してもいけるだろうし向こうでの買取も・・・と思ってたんですけど、予想とは異なる事がかなりあったんです。
こっちで売れると思ってたレコードが全然売れなかったり、逆に菊池桃子のレコードが向こうですごい人気になったり(笑)。
やってみて分かった事がたくさんあって、面白いですよね。
そもそもなんでニューヨークに出されたんですか?
まずは物価が高いっていうのと、たまたまいい場所が空いてたような色んな要素がありました。
最初はロンドンに出そうと思ってたんですけど通貨が不安定になると出せないし、その当時はニューヨークでレコードも流行りつつあったのでいいかなと思って決めましたね。
ニューヨークに出店する上で苦労した事はありますか?
何十件も物件を断られたりとか、工事を頼んでも職人さんが来ないとか。
アメリカでは普通らしいんですけど、こちらとしては慣れるまで苦労の連続でした。
えー!日本だと考えられないですね!
そんな中で物件はどうやって決まったんですか?
色んなラッキーが重なって偶然借りれたんですけど、物件の担当者が来ないとか、ビルの完成が2年遅れたとかもあって本当に大変でした・・・。
ニューヨークに出店しようと思ってからオープンするまで、どのくらい期間が掛かったんですか?
大企業だったら大丈夫なのかもしれないですが、我々のような中小企業はすぐ借りるのが難しいのかなってその時実感しましたね。
そんな苦難を乗り越えて出店されて、逆に良かったなって思う事はありますか?
ニューヨークって夢の街っていうか、テレビとかで観るスーパースターが住んでるわけじゃないですか。だからそういう人が店にフラッと来たり、スターの知り合いが来たりって事はちょくちょくありますね。
本当に近くに住んでるんだなってのは思いましたね。
アメリカの買取事情
買取もします。ニューヨークにもレコードはまだまだたくさんあると思います。
そうなんですね!逆に買取っていうと日本の文化っていうイメージが強いのですが・・・?
やっぱり老舗が向こうも多いのでそっちに直接持って行く人もまだまだ多いですが、実際にやってみると月に何件かはあるみたいで。
ニューヨークはニューヨークで買取のライバルが結構いるんですね?
日本と比べたらどっちの方が完結してる感じなんですか?
それぞれあるとは思いますが、アメリカは日本と違って広いので、出張買取とかはちょっと難しいかもしれないですね。郵送買取もあるとは思いますがあまり聞かないですし、途中破損の可能性も0ではないですからね。
そういう事を総合して考えると、ニューヨークではレコード屋さんに持って行く売り方がまだ多いのと、アメリカって新聞での売ります買いますみたいなのがあって、それに出す人もいます。
それってクラシファイドサービスっていうやつですよね?
そうですそうです!アメリカでは買取に対する日本みたいな行き届いたサービスっていうのはないんですよね。
Goodwillみたいに、どっちかって言うといらない物を寄付するみたいな感じで、リユース品というか二次流通に関しては結構募金や寄付っていうイメージがありますよね。
今はフリーマーケットとかを利用する人が多いですね。
これから買取自体は増えると思うんですけどまだ今は少なくて、逆に円高になった時は向こうの買取が遅れるとうちにはメリットがあるので、そういう為替の防御策としての実店舗っていう所もあります。
なるほど!さすが上手いですね!
逆に言うと円高になった時ってeBayの販売はちょっと下がったりしますか?
そうですね。100円を切ってしまうとeBayも厳しくなります。だからそういう為替の事を考えたら向こうの店舗があってドルでやり取りすると回避も出来ますよね。
今回のコロナショックで訪日外国人が一気にいなくなったじゃないですか。それによって影響ってありました?
渋谷のお店はやっぱり外国人のお客さんが多いので、売上は2割くらい減りましたね。
ただリーマンショックの時みたいにお金がなくなるわけじゃないので、そんなに悲観的になる事もないんじゃないかって仰る方もいますよね。
だから今月いっぱいでなんとか収束してくれれば戻ってくるのではないかとは思っています。
FTFレコードの買取方法
一番の売れ筋はeBay
今御社の販売って、国内・海外の実店舗とeBay、あと自社でもCtoCもアップデートされたんですよね?
そうですね。「GO DIG」っていうレコードに特化したフリマアプリもありますし、ヤフオクとかもやってます。
一番大きいのはやっぱりeBayですね。お客さんの母数が圧倒的に違うんで。
あとヤフオクも転送サービス経由でレコードを買う方がかなり増えていて、どちらもレコードの値段が変わらなくなってきました。
そうすると円高になると売上はちょっと落ちる感じですか?
件数的には下がるような気がしてますね。
今の所は海外からの注文に関してはそんなには減ってないと思いますけど、実際にお店に来る外国人のお客さんがかなり減ってるのでその部分は心配ですね。
じゃ今は円高にふれても特にeBayに影響はないって事なんですね!
御社の場合はニューヨークとかでも店舗を出されて買取をしてるから、そこでバランスも取れているって事ですか?
やっぱりやってみて思ったのは、まだ新参者というか他所から入ってきたって所もあって、アメリカのレコード屋さんってほとんどがデータベースを使ってなくて全部ラベルで値段を付ける感じなんですよね。
だからそもそも値段の管理をしてないし、買取も重さでの買取を昔はしてたみたいなんで。
うちが例えば明細を出してきちんと買取をし始めたら、アメリカでも買取が集まるんじゃないかなって期待はしてますけど、まだそこには至ってないですね。
ちなみに御社ってどういうデータの管理をしてるんですか?
販売したものや販売価格はデータベース化していますね。
今まで25年間分の取引データを保有しているっていう事ですよね?
そうですね。消失した部分はありますがある程度は残っています。
ZOZO買取が撤退して下取りだけにした最大のメリットって、販売データを大量に持っているから自分達のデータに基づいた買取が出来て、よりリユースがしやすくなるっていう話なんですけど、やっぱりリユースとして買取をやっていくためには、自社で保有するデータ数がキーポイントになってくるんですかね?
長年レコード屋さんの栄枯盛衰を見てますけど、やっぱりデータベースを持ってる会社が残ってるので、そこは大きいと思いますね!
なるほど!
ちょっといくつか質問させて頂きたいのですが、武井社長がこれは失敗したなと思う話ってありますか?
いっぱいありますよ。一番は数万円で売れるレコードを間違って数ドルで出品しちゃったりとか。
桁というか、ドルと円の表記を間違えちゃったんですよね。
そんなまさかのケアレスミスもあるんですね。それはキツイ!
今は価格設定自体はオークションなんで、eBayの中でそういう固定価格の販売はないんですけどね。
ちなみに御社ってレコード以外の事業はされてないんですか?
一応CDと、少量ですけどオーディオとか楽器はやってます。レコードを持ってる人が同じセグメントとして出品した時は買取もしています。
それ以外に広げていくとかチャレンジしていく予定とかはないんですか?
それが今後の課題ですよね。やりたい気持ちはあります。
確かに、そこのデータ管理の関係もありますもんね。
昔に比べたら販売価格を調べるのは簡単になっているので、そういう意味では何でも買取出来ると思うんですけど、今後の課題として商材を増やすっていう部分はありますよね。
勝手なイメージですけど、レコードで100枚以上買取出すって事はリピーターはいなさそうですよね?
そうですね。ほとんどの方は引っ越しとかのタイミングで全部売る方が多いですね。
団塊の世代の方がレコードをたくさんお持ちで、そういう今の時代としても遺品整理は多くはなってますね。ただ遺品整理をしても業者の方がわからずにレコードを捨ててしまう事も多いです。
ご主人の遺品整理をした時に、その方が持っていたレコードをオークションに出したら高値で売れたっていう話も実際ありますからね。
レコードを捨てちゃう方が結構いるんですね!めちゃめちゃもったいない・・・。
売れないレコードは?
レコード屋さんって昔は割とダンスミュージックとか黒人音楽とかの専門が多かったんですけど、最近はロックとかジャズとかにも専門のスタッフがいるので、売れるものと売れないものを見極めて、ゴミを減らして買取を増やしていこうとしていますね。
状態の悪い物や傷や汚れとかがある物、あとは当時ものすごくヒットしたレコードとかは、既に出回ってて希少性が低いので売れにくいですね。
CDとかでもAKBとかはあまり価値が付かないですもんね。
そういう物はレコードとはいえ値段が付かない物が多いですね。
なるほど!ちなみに御社って年間何枚くらいの売上があるんですか?
仕入れに関してはだいたい年間120~150万枚ですね。
イーベイ・ジャパンでレコードを一番売ってるのって御社ですよね?
だってグローバル・アワードを授賞されてますもんね!?じゃ御社は日本で一番世界にレコードを輸出してる会社・・・
リユース業界はどうなっていくのか?
レコード買取のこれから
すげー!!(笑)御社はもうトップセラー中のトップセラーですけど、今後リユース業界はどうなっていくと予想されてますか?
人口減少とともにモノ自体がどんどん減っていくと思うので、それに対応して何か始めたり違う商材を売ったりですかね。
あとはうちのスタッフの中でも、日本版のレコードの買付、出ていったレコードの買戻しに海外に行く事もあるんじゃないかみたいな話はしています。
前回の対談で、昭和時代に日本は海外から色んなものが出来たから、今この日本はリユースの掘り甲斐があるって話をされてましたよね?
要は昭和時代にすごくたくさん作られたレコードが現在日本にまだ眠ってますよね。ブランド品とか絵も含めて。
そういう意味では他の国に比べたら日本がeBayとかに参入するのは、物が多くある分恵まれてるので以外な物が売れる事もあるし、今後も色んな事にチャレンジした方がいいですよね!
なるほど!御社もレコードを軸に色々商材を掘り探しているんですね!
それにしてもレコードだけで150万枚にもなるんですね!すごいなあ。
レコードってバーコードがないので管理がしづらい所があるんですよね。それが理由で参入されない方も多いなので、こちらとしても捨てないように広告を出して買取をしていきたいですよね。
御社がここまで成功した秘訣って何だったんですか?
難しい質問ですね(笑)。でもいい人材が集まってくれた事だと思いますけどね。
素晴らしい!リユースってモノを扱ってる会社だからこそ、ヒトを軸に仕事をしていきたいですよね。
そうですね。うちの場合はレコードが好きだっていうスタッフが集まってるので、それが軸にあるのは強いかなとは思います。
これからリユース業界に参入する人へ
素晴らしいですね!じゃこれからリユース業界に参入する人に対しては、どんなアドバイスをされますか?
これから参入して、越境ビジネス、海外に売るような事を考えられてる方は
徹底した現地調査が必要だと思いますね!
例えば「ドラえもん」も、当時はアメリカの一部の地域でしか放送されていなくてあまり知ってる方が多くなかったとか、どこの国を販売の対象とするのかはすごく大事ですね。
やっぱり一度現地に行って何が人気なのかを自分の目で確かめるとかなり参考になるんじゃないかなと思います。
例えばスーパーとかデパートとかを歩くだけでも人気が何かとかがわかりますし、現地の方の行動とか何か欲しいかっていうのは、やっぱり現地でわかる事がたくさんありますね。
ちなみに今ニューヨーク以外で注目してる国とかはありますか?
やっぱりなかなか進出が難しいですが、中国にレコードを売りたいなとは思ってます。
そうなんですね!それは何をされてて気付いたんですか?
ヤフオクですね。中国の方は人口がそもそも多くて、レコードを買う比率が少なかったとしても何万人単位で売れると思うので、やっぱり中国には進出したいですよね。
じゃ今の御社のチャレンジは中国に出店するという事ですね?
そうですね。そういう事が出来ればとは思ってます。
なるほど!すごいなあ。もしパートナーさんがいらっしゃいましたら是非FTFさんまで。
という事で、大変勉強させて頂きました!ありがとうございました!
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